PROJECT

すべてのプロジェクトは
挑戦から生まれた

MORA FOR BUS STOP
プロジェクト

バスの課題を、サイネージで解決

バス会社が抱える社会課題をデジタルサイネージで解決し、
バスの利便性を高める。

バスに関するあらゆる情報が網羅されたデジタルサイネージ、「MORA FOR BUS STOP(※)」。駅のバスターミナル等に設置され、複数のバス会社の時刻表や発車案内、複雑に絡み合う乗り継ぎ情報などを、リアルタイムで、分かりやすく案内しています。2022年に1号機が設置されて以来、今では19の事業者で活用され、全国に計40台設置されるまでに拡大しました。
本システムの全国展開という一大プロジェクトは、どのように進められたのか。中心メンバー3名に、開発までのストーリーや導入にかける想いを聞きました。

※MORA FOR BUS STOP の名称由来:複数のバス会社の運行情報を分かりやすい表示で“網羅する”という意味を込めてつけられた。

MEMBER

  • 全体統括

    営業職

    2007年新卒入社

    清水

    SHIMIZU

    イメージテック事業本部
    ビジュアル&サイネージ事業部
    デジタル推進部開発グループ

  • システム担当

    ソリューションエンジニア

    2023年キャリア入社

    山中

    YAMANAKA

    営業技術部 SE3 グループ

  • マーケティング担当

    企画職

    2019年新卒入社

    柳瀬

    YANASE

    イメージテック事業本部
    ビジュアル&サイネージ事業部
    戦略推進部

複雑に絡み合う運行情報を
もっと分かりやすくできないか

「MORA FOR BUS STOP(以下、「MORA」)」は、複数のバス会社の運行情報を整理し、リアルタイムに一元表示させることができるデジタルサイネージである。従来、バスの時刻表というとバス会社単位で紙の時刻表を掲示、検索サービスもバス会社単位で個別に乱立していくというような状況があり、利用者にとっては一番早い便も非常に探しづらい環境にあった。その改善に挑んだのが「MORA」である。

「MORA」の開発を牽引したプロジェクトマネジャーの清水は、開発前、地域のバスターミナルを見て感じた状況について、こう語る。

「どこの地域でも同じだと思うんですけど、複数のバスが乗り入れているバス乗り場ってものすごく複雑なんですよね。時刻表も、バス会社単位やバス停単位で、立て看板や紙を用いて掲示されていることがほとんど。検索サービスもバス会社ごとに乱立しているような状態で、『一番早く目的地に着くバスはどれだろう?』と困る場面が多々ありました。この状況をなんとかしたいと考え、私たちが得意とするデジタルサイネージの技術を生かして、課題の解決に乗り出すことにしました」

清水はもともと、鉄道の駅構内の広告や時刻表、利用者向けの案内サインなどを担当していた。これらが時代と共にデジタルサイネージに移り変わっていく中、他の交通機関にもデジタルサイネージを活用しようと、社内の少人数プロジェクトの一つとして立ち上げた。

「もう一つ、後押しになったのが、2018年頃から国交省が進めている『GTFS*』と呼ばれる仕組みでした。これは、共通のフォーマットを用いて、各バス会社バラバラの運行情報を取りまとめようという取り組み。我々が『MORA』の開発を考え始めたのが2021年ということで、この『GTFS』をうまく活用して、『MORA』の開発を進めていこうということになりました」

* GTFS:General Transit Feed Specification の略

社会課題を解決する、
イノベーティブなソリューションを

ところで清水は、なぜバス案内サイネージに着目したのだろうか? その裏には、単に「自分たちの技術を生かしたい」という以上の、熱い想いがあったという。

「社会課題の解決を目指す、これは私たち富士フイルムグループが常に心掛けていることです。そして、我々が本プロジェクトで注目したのが“地域社会の公共交通機関の活性化”でした。高齢者の免許返納やバス事業者の深刻な運転手不足など、移動を取り巻く環境が厳しくなっておりMaaSが推進されていますが、そのためにも難易度が高い複数のバス会社の運行情報処理が重要性を増しています。この課題を自社の事業視点でとらえたとき、これまで培ってきた交通広告におけるデザイン表現力であったり、時刻表の中の情報処理の技術を活かせるのではないかと思ったんですよね。また、個人的な話ですが、まちづくりなどの社会課題に対して有用性のあるサービスを開発し、良さを認めてもらい、ゆくゆくは普及していくような仕事を1本立ち上げたい、そんな目標もありました。我々の企業としての想いと個人の目標が重なりあったものが、本プロジェクトだったんです」

清水とともに「MORA」に携わっている柳瀬は、そんな清水の熱意をそばでひしひしと感じたと話す。

「私は2022年度から、マーケティング担当として『MORA』に関わっています。実は、『MORA』を担当する前は、主にアパレルブランドの店舗装飾に関する営業をしていたんです。ですから、いきなり、分野も職種もガラッと違うところへ来てしまって(笑)。そんな中、清水さんが、熱い想いを持ってリードしてくださった。とてもお忙しいはずなのに、なにを聞いても絶対に時間を取って、話を聴いて、一緒に考えてくれて......。『MORA』で新しい価値を提供したいという強い気持ちと、バスサイネージに関する豊富な知識量。それらに支えられながら、とにかく自分たちでやり切ろうと、手探りしながらWebページやナーチャリングプログラムの制作を進めていきました」

与えられる裁量が大きく、
仕事を任せてもらえる環境だからこそ

「MORA」のシステム開発にエンジニアとして携わっているのが、キャリア入社の山中だ。2023年に「映像領域のシステム開発がしたい」と転職を志し、与えられる裁量が大きく、仕事をとことん任せてもらえる当社の環境に惹かれて、入社を決意した。

「入社前の面接時から『MORAの担当をしてほしい』と言われ、本プロジェクトに入ることになりました。もともとバスの発車時刻案内だとは認識していて、多くの人の目に留まるものだと思っていたので、出来上がったときはさぞ感動するんだろうなと期待を胸に入社しました。本プロジェクト参画後は『GTFS』のデータの標準化だったり、それまでお客さまに合わせて完全オンデマンドで開発してきたソリューション自体の標準化だったりと、協力会社さんとも密に連携しながら進めました。入社してから今日まで、私の意見で、製品に色を足すというか、足跡を残すような仕事ができているなと実感しています」

プロジェクトにジョインしたのち、山中は早速「GTFS」データの標準化に取り掛かった。その作業について、「今振り返るとこれが一番大変な作業でしたね」と笑う。

「『GTFS』という決められたフォーマットはあるんですが、記載すべき具体的な内容はそれほど細かくルール化されていないんです。例えば、『〇〇行き、××経由』といった情報も、記載の順番や書き方までは決められていないんですよね。こうした情報について、順番やバス停の正式名称をすべて記載するなどといったルールをしっかり決めておかないと、サイネージにきれいに表示されません。ですから、『現状、このようにバラバラに表示されているから、こういうふうにデータを整備してくださいね』というふうに、いろんなバス会社さんに依頼をしなければならなくて。そういった調整を、私と清水で、ひたすら地道に、泥臭くやっていく必要がありました」

何度も何度も確認し、連絡し、表示のズレを見つけるたびにまた同じことを繰り返す......。
気の遠くなるような作業が続き、時間も手間も、予想以上に多くかかったという。「でも、何度も説明すると、バス会社さんもだんだん同志のようになってきて、『あ、これはこういう理由でこう書かなきゃいけないんだ』と理解してくださるんです。すると、そのあとの作業がスムーズになる。どんどんお客さまとの絆が深まり、製品が良くなっていると感じています」と山中。MORAに関わって約1年半。確実に、その手応えを感じている。

多様な事業者と協力し、
“まだ世の中にないもの”をつくる喜び

現在「MORA」は、19の事業者のバス路線に、40台ほど設置されている。ゼロに近い状態から企画を立ち上げ、システムを開発し、事業者とともに試行錯誤しながらブラッシュアップを続けてきた。そのやりがいや面白さ、可能性とは──。

清水は「多くの人と関わりながら一つのものをつくり上げる過程にやりがいを感じた」と振り返る。

「自分の役割はコレと決めつけずに、広い視野で、粘り強く、いろいろな人と関わりながらプロジェクトを進めることで、最初諦めかけていたことも諦めずに取り組むうちに解決できるようになっていく。そういうシーンがたくさんあって、自分にとって大きな刺激と学びになりました。『MORA』には市政情報や広告を掲載してその広告費を新たな収入源にする仕組みを実装しているのですが、その関連で、自治体やバス会社だけでなく広告代理店とやり取りをする機会もありました。多様な事業者と協力してこのシステムをつくり上げ、そしてお客さまにお喜びいただいている。その事実が、何よりうれしいですね」

山中は、「思った通りに全て問題なく動いているということ自体が、一番の喜びだ」と言う。

「しっかりと要件通りにつくられ、問題なく作動し、利用者はそれを見てちゃんと目的地に行くことができるという、もうこれだけで技術者としては本当に一番の喜びです。泥臭く協力会社とやり取りしながら一つひとつ修正していった経緯もあるので、予定通りちゃんとつくられているということを現地で目にするたびに感動しますし、やりがいを感じています。土台は出来上がってきたと思うので、これからも自信を持って、より多くの自治体やバス会社に広げていきたいと思っています」

マーケティングを担当する柳瀬は、「富士フイルムのイメージが全くないサービスをどうやって展開していくかを考えるのが、本当に面白い」と話した。

「Webの制作もメールナーチャリングもやったことのない状態でプロジェクトにジョインし、ほぼゼロから、どんなコンテンツが必要かを考えていきました。他部署の先輩に話を聞いたり、施策についてのアドバイスをいただいたりしながら、自分で手を動かしWebサイトやメールの原稿を書くことも。試行錯誤の連続でとても苦労しましたが、清水さんや山中さんはじめ社内みなさんの協力があって、何とか土台をつくることはできたと思います。そんな中で特にやりがいを感じたのが、富士フイルムのイメージが全くないものを広めていくということ。一般的に富士フイルムというとチェキやカメラのイメージが強いと思うのですが、MORAという富士フイルムイメージがないものを、どうやったら認知されるかを考えるという挑戦ができたことに、とてもやりがいを感じています。このように全く新しいものをつくり出し市場に導入していく経験を、今後別の業務に就く際も活かしていきたいと考えています。例えば、現在LEDビジョンにも力を入れており、これからどの市場に売っていくか、どういったコンテンツを開発していくか、といった“開拓”の際に、MORAで学んだことをもとに、考えていきたいと思っています」

当社の開発メンバー、自治体やバス会社、そして生活者の想いを乗せて──。今後も「MORA」は、さらなる情報を”網羅”し、進化を続けていく。

※所属・役職等は全て取材当時(2024年)のものです。

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