PROJECT STORY - 2
G7広島サミットにおける
セキュリティカード発行プロジェクト
G7首脳を含む16カ国の首脳が集う会合のセキュリティを守る。
2023年5月、広島県広島市で開催された国際会議、G7広島サミット。その際に政府をはじめ、各国が重要視していたのが、会場の入退場セキュリティ問題。富士フイルムイメージングシステムズは、G7広島サミット会場に立ち入る全ての関係者の身分を証明・区分する、セキュリティカードの発行と管理を託されました。各国首脳や政府関係者はもちろん、海外プレスやスタッフ合わせて約5万人もの参加者が集う中、どのようにしてサミット会場の安心・安全を守ったのか。その挑戦の物語をひも解きます。
[ 全体統括 ]
IDシステム営業部
グループマネージャー
相澤 毅
Takeshi Aizawa
(2002年入社)
[ 営業担当 ]
IDシステム営業部
小島 美樹
Miki Kojima
(2015年入社)
[ システム担当 ]
戦略推進グループ チーフ
丹羽 裕憲
Hironori Niwa
(2015年入社)
高いセキュリティを実現する技術とノウハウ。
日本、フランス、アメリカ、イギリス、ドイツ、イタリア、カナダの七カ国および欧州連合(EU)の首脳が参加して毎年開催される国際会議、G7サミット。2023年には日本がG7議長国を務め、5月19日から21日までの3日間にわたって、G7広島サミットが開催された。各国の首脳陣が一堂に会する場とあって、来場者の入退場を管理するカードには最高レベルのセキュリティ機能が求められた。
プロジェクトに営業部として関わった相澤はこう語る。「当社にはこれまでも国際的な会合のセキュリティカードを手掛けてきた実績がありました。2019年に開催されたG20大阪サミットにおいても、高いセキュリティ機能を兼ね備えたWEBアプリケーション型発行管理システム『CIMSA』を活用し、カード発行を一手に引き受けています。今回も『CIMSA』を活用することで、セキュリティに対する高い要求にも十分に応えられると考えました」。
「一方でプロジェクト開始当初から、納期的にはかなり厳しい状況でした。タフな案件になることは当初から予想はしていました。前回のG20大阪サミットのノウハウを引き継いでいる丹羽に加えて、営業担当として小島をメンバーに加え、この3名が主となって関係各部門を巻き込みながらプロジェクトを進めていきました」。
カーボンニュートラルに向けた
新たな試み。
さらに、カーボンニュートラルに向けた取り組みとして、今回新たにカードの素材にバイオマスプラスチックを採用した。バイオマスプラスチックとは、サトウキビやトウモロコシなどの植物由来の原料を用いて作られた、再生可能なプラスチックを指す。バイオマスプラスチックを材料とすることで、カード1枚あたりのCo2排出量を従来の素材より13グラム抑制することができる。G7広島サミットのカードの発行枚数は5万枚。積もり積もれば大きなインパクトになる。FFISとしても、この機会に環境に配慮したカードを開発し、実用化することで今後市場投入をしていきたいという狙いがあった。
丹羽は、こう振り返る。「G20大阪サミットの開催時も、環境に配慮したカードにできないかという強い要望をもらっていました。その当時はできなかったことが今回実現できたのは、富士フイルムグループの力によるところが大きいと思います。富士フイルムグループの優れた技術をカードに転用するため、当社が社外・社内に掛け合い生産体制を整えました」。
「今回開発したバイオマスプラスチックカードが、富士フイルムグループ内の『「Green Value Products」認定制度』において、業界トップレベルで環境負荷低減に貢献する商品・サービスとして、ゴールドランクに認定されました。カードの一部にはチップなどの機器類が入るため、バイオマスプラスチック100%というわけではありません。それでも環境への配慮が認められたことは非常に励みになりました」。
刻一刻と状況が変わる中、試された現場の対応力。
開催日が迫る中、どこまで柔軟に想定外の事態や要望に対応できるか。今回のプロジェクトにおける難所のひとつが、短納期に加えて、現場での臨機応変な対応を求められた点だ。プロジェクト開始当初から、納期に余裕がないことは見えていたが、デザインの決定が思うように進まなかった。また、事前発行の申請や承認に時間がかかり、さらに申請情報が変更になったり、カードデザインの追加や急遽参加国が増えるなど様々な要因が重なった。
営業担当の小島はこう振り返る。「社外との窓口業務を担っていたのは、相澤さんと私の2名。その場その場で、要望にどこまで対応できるか判断することが求められていました。現場では丹羽さん率いるチームが、カード発行の対応に追われていたので、現場の混乱を招かないように指示系統をひとつにしていました」。
「あらかじめ入念に準備をしていても、不測の事態はどうしても起こります。事前に報告を受けていた以上に関係者の来場があり、複数に色分けされたストラップのうち、関係者用の一色が足りなくなってしまったのです。ちょうど私が現地に向かうタイミングだったので、600本のストラップをスーツケースで運んで、搬入したこともありました」。
事業部全体が一丸となった総力戦。
現地でのカード発行には、事業部の総力戦で取り組んだ。開催の1週間前から現地入りし、2拠点に分かれて常時20名程度が、2交代制で準備にあたった。その甲斐あって、3日間の開催期間中、大きなトラブルもなく無事にプロジェクトは成功を収めることができた。さらには、事業部全体の一体感も高まり、以前にましてチームとしての結束が強くなったと小島は振り返る。
「前回のG20大阪サミットの時は、私自身は一切タッチしていなかったのですが、今回は事業部全体、本当に色々な部署の人が事前の準備にも参加してくれたので、部みんなで達成しようという雰囲気がありましたね。これまでは営業支援のポジションだったので、今回のプロジェクトが営業担当として初めて携わった大型案件。個人的にも特に思い入れはありましたね」。
丹羽はこう語る。「相澤さんと小島さんを支援する立場としてプロジェクトに参加していたのですが、気づけばカード発行を行う現場の統括のような役割を担っていました。カードに印字を行うのは弊社工場で行いますが、実際にストラップをつける作業や梱包する作業は人の手作業。現場にヘルプで来てくれている方をまとめて、1日の目標枚数を達成するために指揮するのは、初めての経験でしたが、大変だった反面やりがいもありました」。
相澤はこう語る。「短納期という厳しい条件下で、開催日程をずらすことができないというプレッシャーはありましたが、無事に終えることができたのは、社外・社内の多くの方のご協力があったから。今回のノウハウをまた次に活かしていきたいと思います。今後は入退場の管理において、顔認証などへの対応も必要になって行くことでしょう。常に最新の情報をキャッチアップしながら、FFISならではの価値を発揮していきたいと思っています」。